ピアノの撮影

3、カメラ2台のメリット

まずは2つの動画を見比べてほしい。

上の動画のほうが良いと思っただろうか?
下の動画を撮影したカメラマンは実はヘタではない。編集を考えて撮っているのだ。

カメラ2台で撮影して編集すると以下のようになる。

カメラマンになりたての人、カメラマンを目指す人に意識してもらいたいことがある。
撮影はカメラワークを見せるためにするものではない。
的確に撮影対象を撮影できてこそである。

1つ目の動画よりも3つ目の2台編集の動画のほうがじつはお客さんに喜ばれる。
なぜなら演奏の開始とともに演奏者全身の映像となり、
一つ目の動画よりもずっと早いタイミングで演奏者のアップが見られる。
ペダルの操作が見たいときには再び全身の映像に切り替わる。

なるべくストレスなく、見たいときに見たいものが見られる。そんな動画制作を意識したい。

4、全身用カメラの重要性

前項で少し触れた、足元まで入れた全身の映像、
これはピアノ演奏の撮影においては是非ほしい映像である。

ピアノはペダルの踏み方次第で演奏が全然違ってくる。
曲にもよるが、ペダル操作も見たい場面は多い。

前頁の第1項で鍵盤込のアップのカメラポジションについて説明したが、その隣に全身用のカメラを置きたい。

カメラを2台並べて置くと、カメラマン1名で2台のカメラを操作できる。
2台のカメラを同時に動かすことはない。というか、同時に動かされると編集できない。

どちらの隣かというと、手元足元が見やすい、舞台に向かって左側(業界用語で下手(しもて))が望ましい。

この全身のカメラは「これさえあればなんとかなる」編集のベースとなる。
ピアノの演奏の撮影は、この全身の映像さえあれば成立するのだ。

この全身の映像を軸に、もう一方のカメラで「よりアップ」や、演奏の前後では「舞台全体のヒキ」を撮っていけば、より見やすい、わかりやすい映像になる。

ダンスやオーケストラの撮影だと、舞台全体のヒキ映像が編集のベース、ほぼ固定カメラになることが多い。
カメラマンによっては、ヒキ映像=安全パイ=ほぼ固定カメラと思い込んでいる人もいる。

が、ピアノに限らず「必要十分な情報を含んだ絵」がベースになるという考え方をしてもらいたい。
場合によっては、+αのほうのカメラでヨリヒキしたほうが撮りやすいのだ。

次ページで編集を意識した撮影を説明する。